卒業式の祈り
だけどいつもよりも、彼と繋がっている医療機器が少なくなっているような気がしてホッとした。

彼はぼんやりしていたけれど、こちらに気がついて、顔だけ私の方を向いてくれた。

「三井くん」

大きな声を出して彼を驚かせないように、はやる気持ちを必死に抑えた。

笑顔をつくってゆっくり彼に近づいた。

「三井くん、私だよ、サラだよ」

彼と目を合わせただけで、もうなんにも言葉が浮かばなくなった。

彼は少し目を細めて笑ってくれてるように見えた。

その瞳には、確かな光が宿っている。

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