犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら



守屋のペースに合わせてゆっくり歩くのは、俺なりの気遣いと、もっと一緒に居てぇな。っていう俺の気持ちの表れ。



ゆっくり歩きながら、なごみやでの彼女の表情を思い出すと、愛しい気持ちが溢れてくる。

やっぱり1ヶ月も空いたら、彼女への気持ちもさらに大きくなってるような気がした。



隣を歩いていると、ちょこちょこ当たる彼女の小さな冷たい手。

強がってても実際の守屋はなかなか素直になれねぇ可愛い女の子だ。
俺はそんな彼女が愛しくて、無性に触れたくて.....
我慢が出来なくなった俺は、彼女の右手にすっと指を絡ませ、ぎゅっと握った。



「ちょっと!」


と反抗しても、次第に俺の手をぎゅっと握り返してくれる彼女を離したくないと思った。


寒い風が左手の彼女のあたたかさを余計に意識させる。



守屋が今どんな気持ちなのかは俺にはさっぱり分かんねぇけど、少しは俺の事を意識してくれてんだろうと思った。


ふと左から視線を感じてその先に目を落とすと、少し悔しそうな、でもほんのり頬が赤く染った上目遣いの彼女とぱっちりと目が合った。



酒が入っているからか、その目は少し涙ぐんでいて、その顔は反則だろ。と心の中で突っ込んだ。



俺と目を合わせて恥ずかしそうにする守屋に、俺は今まで耐えてきた理性を手放して彼女を路地裏にグイッと引っ張った。


戸惑っているのか、迷っているのか。
それとも何も考えていないのか。
彼女の気持ちは読めなかったけど、よそ見をする彼女の顎をクイッと上にあげた。



「よそ見すんな。」


俺だけ見てろよ。そんな気持ちを込めて、俺は誘惑するように、親指で彼女の熱くなった唇を撫でた。




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