弟くんの逆転


女の子だもん、ファーストキスに夢くらい見る。

海辺で、夕陽をバックで…とまでは考えてないけど、せめて好きな人としたかった。

こんな、試すみたいな感じじゃなくて…。


「……っ、」

「あーあ。俺、梓ちゃん泣かせちゃった?」


どこか掴めない雰囲気で聞いてくる奈保くんに、無言で頷く私。


「そんなに嫌だった?キス」

「……気持ちがないキスとか、やだ…。遊びでキスとかしないで…」


奈保くん、いい子だったのに。

ずっと私のこと、嫌いだったのかもしれない。


泣きながらも訴えると、


「気持ちがない?遊び?笑わせないでよ」


涙なんか引っ込んでしまいそうなくらい、ゾクッとする冷たい瞳で、ただひと言、奈保くんは言った。




< 24 / 80 >

この作品をシェア

pagetop