弟くんの逆転
女の子だもん、ファーストキスに夢くらい見る。
海辺で、夕陽をバックで…とまでは考えてないけど、せめて好きな人としたかった。
こんな、試すみたいな感じじゃなくて…。
「……っ、」
「あーあ。俺、梓ちゃん泣かせちゃった?」
どこか掴めない雰囲気で聞いてくる奈保くんに、無言で頷く私。
「そんなに嫌だった?キス」
「……気持ちがないキスとか、やだ…。遊びでキスとかしないで…」
奈保くん、いい子だったのに。
ずっと私のこと、嫌いだったのかもしれない。
泣きながらも訴えると、
「気持ちがない?遊び?笑わせないでよ」
涙なんか引っ込んでしまいそうなくらい、ゾクッとする冷たい瞳で、ただひと言、奈保くんは言った。