弟くんの逆転
「あー……ん…おいしい…」
「いつもの梓ちゃんだったら、きっと慌ててるだけなのにね。変な感じ」
そう言って奈保くんが笑う。
「…梓、相当やばいね。私、薬も買ってくる。確か、なかったんだよね?」
「なかった~から飲んでない~」
「ん、わかった。奈保、梓に何か変なことしたらぶっとばす」
そう言い残して、香乃は行ってしまった。
部屋には私と奈保くんのふたりっきり。
熱があって「あーん」なんて普通にできてたのに、ふたりっきりというのを少し自覚しただけで、心臓がうるさい。
「ふたりっきりだね、梓ちゃん」
「えっ……!?う、うん、そうだね…」
「あ、いつもの梓ちゃんに戻ってる」
…うん、半分くらいは。
でも、もう半分くらいはまだおかしいままだと思う。