弟くんの逆転



「あー……ん…おいしい…」


「いつもの梓ちゃんだったら、きっと慌ててるだけなのにね。変な感じ」


そう言って奈保くんが笑う。


「…梓、相当やばいね。私、薬も買ってくる。確か、なかったんだよね?」


「なかった~から飲んでない~」


「ん、わかった。奈保、梓に何か変なことしたらぶっとばす」


そう言い残して、香乃は行ってしまった。


部屋には私と奈保くんのふたりっきり。


熱があって「あーん」なんて普通にできてたのに、ふたりっきりというのを少し自覚しただけで、心臓がうるさい。


「ふたりっきりだね、梓ちゃん」


「えっ……!?う、うん、そうだね…」


「あ、いつもの梓ちゃんに戻ってる」


…うん、半分くらいは。
でも、もう半分くらいはまだおかしいままだと思う。


< 69 / 80 >

この作品をシェア

pagetop