弟くんの逆転
「奈保、くん」
「ん?」
私が奈保くんに声をかけると、奈保くんは優しく聞き返してくれる。
「今日は、何もしないよね…?」
「していいの?」
「だ、ダメ……!というか、いつも許可してないもん…!」
「あはは、ごめんごめん」
ごめん…と言ってるわりには、かなり笑ってるよね。あんまり反省してないよね。
「…奈保くん、ありがとね、ほんと。今日来てくれて」
「どーしたの?急に」
「なんとなく。それに奈保くん、受験生でしょ?なのに来てもらうの、申し訳なくて」
「それは大丈夫。梓ちゃんの夏休み、もらう予定だから」
「え?」
…もらうって、なに。なんか怖いのはなんで。
あと、サラッと言わないで、そんなこと。
「…ま、それは後でまた話すけど。今はちゃんと風邪治してね。うつしたの俺だけど」