3度目に、君を好きになったとき

先輩は私の使ったフォークのことを特に気にしていない感じで、優雅にケーキを口に運んでいる。


間接キスなんて、先輩にはどうでもいいことだよね。

きっと、私のことはただの後輩の一人にしか感じていないはず。


あのとき部室に残っていたのが他の誰か──たとえば村上さんだったら。きっと彼女のことを誘っていたのだと思う。

想像すると、微かに胸が痛んだ。


「白坂さん……、やっぱり覚えてないかな」


不意に先輩は、覗き込むように私の目を見つめてきた。

深い茶褐色の瞳が、店内の照明を映しキラリと反射する。


「何を、ですか?」

「中学のとき、白坂さんがチーズケーキを焼いてくれて一緒に食べたんだ。……美味しかったな」

「え。私が?」


チーズケーキを、先輩のために……焼いた?


全然記憶になくて、焦って脳内の引き出しを全て開ける勢いで探し回った。

先輩を傷つけたくないし、嫌われたくなかったから。

……でも、見つからない。思い出せない。
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