マリンスノー
*
「凪、一緒に帰ろう。」

その日の放課後、いつも通り迎えに来たうみくんに。
いつも通り準備をして隣に並んで帰る私。
……私いつまで続けるんだろう。

もうそろそろ別々にするべきだって分かってるのに。
それでも甘えて一緒に帰っちゃう。

霞くんは諦めなくていいってそう言ってくれたけど。
でも私は、このままじゃいけないと思う。

現に今日の朝、雪加瀬さんは待ち伏せしてた。
きっとうみくんと登下校したいんだと思う。

……今日、うみくんに伝えよう。
そして私も覚悟を決めないと。
前に進まないと。

うみくんを諦める覚悟を。

靴を履き替えた後、空を見上げると雪が降っていた。
地面にはうっすらと雪が積もっていて。
ローファーで雪をきゅっと踏めば、足跡がくっきりを浮かび上がった。

雪が降ったことでいっそう外は寒くなって。
身体を一段と縮こまらせて私とうみくんは歩いた。

いざ言おうと決めるとなかなか勇気が出なくて。
話を切り出そうとすると、声が喉元でつっかえる。

どうしてか今日はうみくんも話さないし。
そのことが余計私を緊張させた。

「あの。」

「えっ。」

私が勇気を出す前に、うみくんが先に口を開いた。

「凪に聞きたいことがあるんだけど。」

「なに?」

改まってうみくんが聞きたいことなんて珍しい。
いつもは前置きなく聞くのに。
不思議に思いつつも次の言葉を待っていると。
うみくんは覚悟を決めたように口を開いた。

「凪は彼氏いるの?」

……。

「……今、なんて?」

「だから、……凪は彼氏いるの?」

もう一度、はっきりそう口にしたうみくんに頭が混乱し始める。
うみくんは何を言ってるんだろう。

何度考えても理解できなくて、首をかしげてしまう。

「よく話が理解できないんだけど……」

「……今日の朝、凪が男の人といたから。」

今日の朝って。霞くんと会ったときのこと?
でもなんでうみくんが知って……

「朝、やっぱり凪の様子が変だったから水菜には謝って凪を追いかけたんだ。
 そしたら校門付近で凪が男の人とその……じゃれあってたから。」

私のこと追いかけてきてくれてたんだ……。

雪加瀬さんより私のことを優先してくれたことが嬉しくて。
思わず緩む口をバレないように隠した。




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