私の知らない「ワタシノココロ」
「眼鏡外してみて?」

またか。私は本を読みながらため息をつく。初めて言葉を交わしたあの日から、淡河は何かと私に話しかけてくるようになった。それほど回数が多いわけではないのだが、前と比べれば断然だ。そして何より、
「だから外さない。外したところで私に損しかないし、あなたに得もないから。」
やたらと眼鏡を外せと迫ってくる。その真意もわからないまま。

(ただの嫌がらせ、って訳でもなささうなんだけど…)
嫌がらせにしては言葉に悪意がなさすぎる。
「俺には得があるけど?『自称』可愛い阪井さんの顔が見れるから。」
確実に悪意、というかからかいの込められた言葉に、私は思わずページをめくっていた手を頭にあてる。
(こいつも顔だけのやつ…ならもういいや。)
その言葉で一気に思考が冷める。また男を信じそうになってしまった私が馬鹿だった。この場合は恋愛感情はなかったが、ふつうに話せる人だと思っていた淡河も、やはり顔。それなら話に付き合ってやるつもりはない。
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