墜落的トキシック


「ちょっ、どこ行くのっ?」

「あ?トイレ。俺が戻ってくるまで休憩でいーよ」




そう言ってすたすたと教室を出て行ってしまった。



何なんだ、一体。
背中を見送りながら首をかしげる。

ちょっと挙動不審だったよね?さっきの侑吏くん。



だけど、だからって考えても仕方のないことで。

早々に考えるのを諦めて、手持ちぶさたになった私は何となく侑吏くんの教科書をぱらぱらとめくる。




ところどころに貼られている、ピンク色のファンシーな付箋が目につく。
何度見ても、侑吏くんとは不釣り合いなんだよね。このカワイイ色。



それに、前に隣の席だったとき、こんなの使ってたっけな。
ううん、使ってなかったはず。たぶん。



そんなことを考えつつページをめくっていたけれど。

ふと、手が止まる。





「……あれ、これって」




息をのんだ。
気づいてしまって、指先が動揺でかすかに震える。



確認するためにもう一度、ページをいくつかめくって。
やっぱり、そうだ。



教科書、ピンクの付箋が貼ってあるページ。




これ……全部。

全部、私が苦手だと嘆いていたところ。私が間違った問題、わからないと泣きついたところ。


侑吏くんには似合わないファンシーな付箋は全部、全部私のためだった?




「……なんで」




わからない、できないと嘆いた私の台詞を、あんなに馬鹿にしてたのに全部聞いてたんだ。




嬉しい?感動した?

そんなんじゃない。
ただ、わけもなく泣きたくなったんだ。





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