墜落的トキシック
「少なくとも、北村さんたちが目くじら立てるような関係じゃないよ」
「でも最近よく一緒にいるよね。テスト期間も二人で勉強してたし、夏祭りもそう」
一緒にいる時間が増えたのは実行委員の関係だ。テスト期間と夏祭りは……、きっとそのおまけみたいなもの。
だけど、そんな答えで北村さんを納得させられるはずがない。
きゅ、と唇をひき結んで黙っていると。
「……久住さんは。侑吏が好きなの?」
「はあっ? 待って、どういうこと?」
「だから、侑吏のことが好きなのかって聞いてるの」
私が、侑吏くん、を?
「絶ッ対ない!」
「本当に?」
「当たり前だよっ」
私の返答に、北村さんは、そう、と小さく呟いた。
「……じゃあ、仁科くんは?」
「え、」
「仁科くんのことはどう思ってるの」
ハルのこと……?
目を見開いて、思わず口ごもった私を北村さんは鋭く睨んだ。
「仁科くんが久住さんのことしか見てなかったから、だから諦めた。なのに、あっさり別れるし、そしたら今度は侑吏って。久住さんのこと、全然わかんない」
麻美の言ってたこと、本当だったんだ。
北村さんは、ハルのことが好きだったって。
だからって。
「そんなこと……」
私に言われても。
でも、北村さんの表情は怒りとか嫉妬とか、そういうのじゃなくて。
苦しいまでの恋情が滲み出ていて、それに圧倒された。
「侑吏を好きな子なんて他にいっぱいいるの。そんな程度なら、さっさと譲ってよ」
「……」
「久住さんのそのどっちつかずの態度が、いろんな人を傷つけてぼろぼろにするんだからね!わかってるっ?」
羨ましいと思った。
何に、かはわからない。わからないけれど。
結局何一つ言葉にできずに、黙ったままの私を北村さんは鋭く一瞥して。