墜落的トキシック


「少なくとも、北村さんたちが目くじら立てるような関係じゃないよ」

「でも最近よく一緒にいるよね。テスト期間も二人で勉強してたし、夏祭りもそう」



一緒にいる時間が増えたのは実行委員の関係だ。テスト期間と夏祭りは……、きっとそのおまけみたいなもの。


だけど、そんな答えで北村さんを納得させられるはずがない。
きゅ、と唇をひき結んで黙っていると。



「……久住さんは。侑吏が好きなの?」

「はあっ? 待って、どういうこと?」

「だから、侑吏のことが好きなのかって聞いてるの」



私が、侑吏くん、を?



「絶ッ対ない!」

「本当に?」

「当たり前だよっ」



私の返答に、北村さんは、そう、と小さく呟いた。



「……じゃあ、仁科くんは?」

「え、」

「仁科くんのことはどう思ってるの」



ハルのこと……?

目を見開いて、思わず口ごもった私を北村さんは鋭く睨んだ。



「仁科くんが久住さんのことしか見てなかったから、だから諦めた。なのに、あっさり別れるし、そしたら今度は侑吏って。久住さんのこと、全然わかんない」


麻美の言ってたこと、本当だったんだ。
北村さんは、ハルのことが好きだったって。

だからって。



「そんなこと……」



私に言われても。


でも、北村さんの表情は怒りとか嫉妬とか、そういうのじゃなくて。
苦しいまでの恋情が滲み出ていて、それに圧倒された。



「侑吏を好きな子なんて他にいっぱいいるの。そんな程度なら、さっさと譲ってよ」

「……」

「久住さんのそのどっちつかずの態度が、いろんな人を傷つけてぼろぼろにするんだからね!わかってるっ?」



羨ましいと思った。
何に、かはわからない。わからないけれど。

結局何一つ言葉にできずに、黙ったままの私を北村さんは鋭く一瞥して。




< 208 / 323 >

この作品をシェア

pagetop