墜落的トキシック
侑吏くんの口から出たとは到底思えない単語にぱちぱちと瞬きを繰り返しつつ。
「ヒーローになりたいの?侑吏くんって」
そんなキャラだったっけ、と戸惑いを隠せずにいる私の頬を侑吏くんは乱暴につねる。
「っ、痛」
「……おまえの、だし」
「……?」
結局侑吏くんの言いたいことは何もわからなかった。
だけど、でも。
わざわざここまで来てくれたのはまぎれもない事実だ。
「侑吏くんは、さ」
「なに」
「嫌いじゃないの?……私のこと」
こんなこと、わざわざ聞くなんて頭おかしいと思う。
それに、妙に恥ずかしい。
だけど、どうしても気になって。
おずおずと尋ねた私を侑吏くんはぎろりと睨んだ。鋭い眼光だ。
「あのさあ。俺がおまえのこと嫌いなんていつ言った?」
「え、だって……」
私といるといつもすぐ怒るし、嫌味ばっかり言うし。
「俺のこと嫌い嫌いってうるさいのはおまえの方。俺は一度も言ったことない」
「……」
「……おまえ、死ぬほど面倒くさい女だけど、別に嫌いじゃねーよ」
死ぬほど面倒ってどういうこと。
と、毒づきたい気持ちはやまやまだけど、それでも。
それでも、なぜかほっとした。安心した。
どうしてこんな気持ちになるの。
侑吏くんに嫌われたって────ハル以外の誰に嫌われたって痛くもかゆくもないはずだったのに。