墜落的トキシック


「ま、そんくらい悪態つく余裕あるなら大丈夫か」



侑吏くんは、ふ、と笑ってから声のトーンを低くして。



「……で、誰にやられた?」

「え?」

「足、怪我してんだろ。そんで閉じ込められてるし」

「違う、これは事故!」

「は?」



怪訝な顔をした侑吏くんに体育館倉庫に閉じ込められるに至った経緯を説明すると、アホくさ、と呆れたように言われた。至極その通りだけど。



「けど、おまえをここまで連れ出した奴らにも原因はあるだろ」



責めたりしなくていいのか、と侑吏くんは首をかしげる。


ちなみに北村さんたちの名前は出していないよ。侑吏くん本人に言うのは、あまりにも酷だと思ったから。



「そんなのいいよ、別に」

「ずいぶん生ぬるいんだな」

「あの子たちは皆侑吏くんが好きなんだよ。その気持ちが行き過ぎちゃっただけだもん」



真面目な顔で呟いた私を、侑吏くんが理解不能、とでも言うように見据える。



「おまえさあ。俺が来なかったら、どうなってたかわかってんの?」



たしかに足はひねったし、熱中症にもなりかけた。

だけど、私には彼女たちを責める気持ちなんて湧いてこなかった。



「だって、あの子たちの気持ちもわかるから」



侑吏くんが好きだから、一緒にいたいんでしょ。だから、私を目障りだと思ったんでしょ。


わかるよ。

何をしてでも手離したくない気持ち。



だって、私が白雪姫なら毒リンゴでも望んで食べる。それで、王子様が手に入るなら自己犠牲だって厭わない。




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