墜落的トキシック
珍しいから。
ハルが誰かのこと、そんな風に気にかけるのは。
「……俺がどうして佐和のこと気にかけると思う?」
「どうして、って」
わからないから聞いているのに。
と思ったところで、ハルが私の手首をするりと捕まえた。
驚いて、思わずスプーンを取り落としてしまいそうになる。
「ハル……?」
そっと、名前を呼ぶけれど、ハルは私のことを掴む手を緩めなかった。
それどころか、少し力が強まった気さえする。
「最近の花乃はやたらとあいつの匂いさせてんね」
「え……」
「……あいつのこと好きになった?」
あいつ、が誰のことを指しているかわからなくて固まる。
すると、間髪入れずにハルが言葉を重ねた。
「佐和のこと、好きになった?」
言葉と同時に、ぎり、と手首を掴む力が一層強まる。痕になりそうな程、だ。
首を横に振って否定すると、ハルは額を私の肩にこつん、と載せた。
「あー……」
「……?」
「解放するつもりとかいい子ぶってみたけど、いざってなると……まじでしんどい」
唸るような、呻くような声。
思わずびくりと肩が揺れた。
それに反応するかのように、また力がぎりっと強まる。