墜落的トキシック
「ハルっ?」
振り向けば、やっぱり。
視界に飛び込んでくる柔らかなブラウンの髪。
いつもはふわっとしているそれが、湿って独特の色香をまとっている。
ハルもお風呂上がりなんだ。
……というか、ハルのクラスも今日、ここのホテルに泊まるんだ。
「今から部屋に戻るところ?」
「あ……うん。そうだよ。ハルは?」
「俺も。クラスの奴らはサウナで根比べしてるみたいだけど、のぼせそうだったから先に上がってきた」
ハルらしい返答。
ハルは友達と群れたりしないもんね。
そういえば、ハルに友達っているのだろうか……と失礼なことを考えて、いやハルのことだから上手くやっているのだろう、と自分の中で結論づける。
「……そっか」
ハルと話すの、久しぶりだ。
『好きだよ』
ヨリを戻さないか、ともちかけられて以来、まともに話していない。
沈黙が、気まずい。
でも、気まずさの種類が、侑吏くんといるときとは全然違う。
この気まずさは、怖い。
沈黙には耐えられそうにない、だけど、口を開けばきっと。
きっと、私はハルを傷つける────そんな予感がして。
ぎゅっと唇を噛む。
そのすぐあとに、エレベーターの扉が開いた。
吸い込まれるようにふたりで乗り込んで。
「何階?」
「えと、5階」
ハルがボタンを押してくれる。
「ハルは?」
「俺は4階」