墜落的トキシック
最近、侑吏くんを見つけるのが早くなったと思う。
そろそろ特技になりそうな勢いだ。
平均身長よりは高いと思うけど一際目立つような背格好ではない。
ましてや、黒髪短髪なんて他にもたくさんいる。
後ろ姿だったら、これというほどの奇抜な特徴はない。
なのに、わかるんだ。
わかるように、なった。
「……」
侑吏くんとは依然として気まずいまま。
このまま、気まずささえ忘れてしまって、赤の他人のようになるのかな、と容易に想像できてしまうくらいだ。
そうなったら、せいせいする?
だって、侑吏くんなんて────なんて、何?
想像すると、決まって苦しくなる。
張り裂けそう、というよりははち切れそう、だ。
侑吏くんの襟足のあたりの髪から、水のしずくがぽたりと落ちた。
思わずその粒を目で追いかける。
そっか、侑吏くんもお風呂上がり。
水も滴るなんとやら、だ。
気づかぬうちに足を止めていて。
そのことにはっと気づいたときには、侑吏くんたち一行はエレベーターの扉の向こうへ消えていた。
ずっと、侑吏くんのことを考えている。
……これって、私、たぶん。
ずんずんとエレベータに向かって前進しながら、続きを頭の中で言葉にしようとした、そのタイミングで。
「花乃?」
びくん、と肩が大袈裟に揺れた。
後ろから突如、呼ばれた名前。