墜落的トキシック


そうこうしているうちに、実験がはじまった。
班のメンバーと手分けしながら手順通りに進めていく。


今回の実験の手順には加熱が含まれている。
みんなが試験官などの準備をしてくれている間に、私はガスバーナーの準備をいそいそと始めた。



点火するべく、マッチを擦る。
───この時点で、私は重大なミスを犯してしまっているのだけど、気づかなかった。


気づかないまま火をガスバーナーに近づけた、その次の瞬間。




「っ、離れろ!」




鋭い声。
反射的に目を瞑ると、誰かが私を体ごと庇う。

そしてまぶたを開けた私の視界に飛び込んできたのは大きく上がった炎。
その出所は私がついさっきまで扱っていたガスバーナーで。



「っぶねーな。この馬鹿女」

「っ、侑吏くん……っ?」




私を身を挺して庇ってくれたのは、侑吏くんだったらしい。
呆れた顔で私を見据える侑吏くんに、胸が詰まって何も言えなくて。


その間に、炎上したガスバーナーはニッセンが処理してくれていた。
私が調節ネジの確認を忘れていたことが、炎上の原因だ。



そのあとニッセンにこってりと叱られること数分。
反省しつつ、持ち場に戻った。




「あの、侑吏くん」

「……なに」




実験が終わり、後片付けまで完了したあとで。
何事もなかったように涼しい顔をしている侑吏くんに声をかける。



「さっきは、えと……ありがとう」

「別に。ただの人命救助だろ」



飄々とした顔で言う侑吏くん。


でもね、覚えてる。
私がヘマをしたとき、なんだかんだいつも助けてくれるんだよね。




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