墜落的トキシック
「まあ。……つーか、母さんが」
「お母さん?」
首を傾げると、佐和くんはちょっとしかめっ面になる。
不機嫌、というよりこれは。
なんだろう……照れてる、みたいな。
初めて見る表情。
「……美味しいってちょっと言っただけでそればっか弁当に入れるんだよ。あの人。気づいたときには全部同じようなおかずになってた」
意地でも眉を寄せたままの佐和くん。
見慣れないその表情に、そわそわする。
「……佐和くんのお母さん、かわいい人なんだね」
なんだか微笑ましく思えて、ふふっと笑いながら、そう言うと。
佐和くんが眉の間に寄せた皺の数が、増えた。
「親ばかっていうんだよ」
「それくらい佐和くんのことを大切に思ってるんだよ。いいお母さんじゃん」
好きなおかずでいっぱいになったお弁当、なんて。
素敵だなって思うよ。
そんな風にばかになってくれるなら、親ばかだって全然素敵だ。
そして、ふと思う。
お母さんがそんなに素直でかわいい人なのに。
……なんで佐和くんには、遺伝しなかったの?
────ああ、佐和くんの揚げ足をとろうとしていたはずなのに、いつの間にか脱線してしまっていた。
本来の目的を思い出したところで、目についたのは。