スパークリング・ハニー
高校二年生の夏。
みんなと話しているなかでも、やっぱり進路の話をすることが増えてきた。
もちろんまだあやふやでもおかしくない。そういう子だってたくさんいるけれど、確固たる目標を掲げているひとを見ると凄いなと思うの。
憧れるし、少し焦るのかもしれない。
そして、そこにはちょっとした不安もある。
「俺は決まらないなら決まらないでいいと思うけどな」
口を挟んだのはお兄ちゃんだった。
瞬きを繰り返す私に、にやっと笑う。
「目指したいものとか夢とかって、焦って見つけるもんじゃないと思うんだよ」
「そう、かな」
「うん。だって、俺がそのいい証拠だろ。誰も、パティシエを目指すようになるなんて思ってなかった」
たしかに、と納得する。
中学三年生までのお兄ちゃんは、俄然サッカー一筋だったもの。
その頃の夢はサッカー選手になることで、家族もみんなそれに向かって応援していたし、そしてそれは夢のままで終わる話でもなかったように思う。
抜群のセンスを持っていたらしいお兄ちゃんはずば抜けて上達がはやかったし、ゆく先々で出会う数々のコーチに才能がある、と目をかけてもらっていたほどだった。