スパークリング・ハニー


「んーとね、せっけんの香り」

「せっけん……!」



なんてかわいらしい響きなの。



「みなみっぽいね、その匂い」

「そうかなー、ありがと」



みなみちゃんが動くたびに、柔らかい香りが漂ってきて、なんだか惚れてしまいそうだ。


女の子らしいほのかな甘さのある匂いは、きっと男の子なら誰でも好きだと思う。


篠宮くんだって、と男の子の筆頭として篠宮くんを思い浮かべる。すると、なんだか心がちょっと重たくなって。



「ひかちゃんは、何の香りを使ってるの?」



みなみちゃんの声に、慌てて頭のなかに浮かんだ篠宮くんの姿を振り払う。



「私はベリーのだよ!」



ピンクのボトルをしゃかしゃかと振って見せる。


ベリー、正確にはクラッシュベリーの香り。

私はもっぱらこれを使っている。




「へえ!かわいいね……!」

「えへへ。でもね、可愛いっていうより、その……」



さすがに恥ずかしくて口ごもると先を促すようにみなみちゃんが首を傾げた。

仕方なく、もごもごと口を動かす。




「お、美味しそうだなって」



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