スパークリング・ハニー
篠宮くんの手が、そのまま私の髪をさらっと撫でて、落ちた髪の一束を耳にかけてくれる。
また心臓が一段とうるさくなりかけた、そのタイミングで。
「あ、瑞沢そろそろ時間じゃない?」
「ほ、ほんとだ!」
お昼休みはもう終わり。
そして午後イチが、私の出るサッカーの試合だ。
そろそろグラウンドの方に戻らなきゃ。
「じゃあ、またね……!」
慌てて手を振って、ぐるんっと背を向けると。
「瑞沢!」
背中を追いかけてくる篠宮くんの声。
思わず足を止めて振り返ると、篠宮くんの腕がまっすぐに伸びてくる。
手のひらはぎゅっと固くこぶしを作っていた。
思わず頬がゆるむ。
そして私もしっかり手を握りしめて、グーをつくって。
腕を伸ばす、まっすぐ。
ふたつの拳はこつんと合わさって、ぶつかったところからぴりっと電流が流れたような気がした。
「頑張って」
「うん!」
今度こそ背中を向ける。
充電完了。満タンだ。
篠宮くんの、一挙一動が、かんたんに私のパワーになるの。
今なら、なんだってできそうだ。
────篠宮くんといるといつもそう思うの。