スパークリング・ハニー
「なんか目が冴えちゃってさ、外出よっかなーって」
「梶田くんも?」
同じだ、ってびっくりする。
みんな同じように眠れない夜もあるのかもしれない、なんて考えていると梶田くんは含むように少し口角を上げた。
「光莉ちゃん、もしかしてさっき朝陽に会った?」
「……え」
なんで、それを。
固まった私を見て、やっぱり、って梶田くんは呟いた。
「俺、朝陽が部屋出て行くの、見ちゃったんだよねー」
へらって笑う。
だけど、梶田くんの瞳のなかの水たまりは細かく揺れていて。
私は、梶田くんのこと、よく知らない、けど。
もしかして……と頭の中で勝手に憶測を組み立てていると。
「あいつ、ハッチ先生のとこに退部届持って行ったでしょ」
「……!」
知っているんだ。
組み立てた憶測がはずれではなかったことを知る。
みんな、変わった様子はなかったから、誰も知らないのかと思っていた。
「部員で知ってるのは俺だけ、ね。これでも、俺、副キャプだから」
それに、っておまけみたいに付け足す。
「俺、朝陽と中学も一緒だったからさ。おのずと知ってるというか、知らざるを得なかったというかさ」
全部知ってるんだ。
あいつが何に囚われてるのかも、どうして辞めていこうとするのかも。全部。