スパークリング・ハニー
ごめん、篠宮くん。
ハッチ先生が今忙しいなんて、そんなの、口からでまかせの嘘だ。
信じてくれたことが、つらかった。
篠宮くんに憧れる気持ちは何も変わっていない。
篠宮くんのことが好きなのに、嘘をついてしまった。
ごめんなさい。
……いやだよ、ほんとうは、こんなの。
行くあてもないのに、靴に履き替えて外に出る。
秋の終わり、夜、ぴりつくほどの冷気が体に張りついた。
何してるんだろう、こんなところで。
だけど、戻ったって眠れる気がしない。
ぼんやりと空を見上げると、無数の星が輝いている。
その数に純粋に驚いた。
そっか、ここ、山の中だから。
空気もきれいだし、他に明かりも少ない。
星が綺麗に見える条件が揃っているんだ。
そのなかでも特に明るい星を指先でなんとなく、なぞっていると。
「あれ、何してるの、こんなとこで」
背後から、声がした。
男の子のもの、だけど、篠宮くんじゃない。
誰だろう、と思いつつ振り向く。
「……あ、梶田くん」
暗がりの中、だんだんと輪郭がはっきりしてくる。
現れたのは、副キャプテンの梶田くんだった。