スパークリング・ハニー
「篠宮くん、篠宮くん」
肩にそっと手を乗せて、揺する。
起きて、もうすぐ、完全下校の時間だよ。
ぜんぜん起きない篠宮くん。
あまりにも起きないから、起こすのそっちのけで余計なことを考えてしまう私のあたま。
やっぱり、篠宮くんってすごくいい匂いするんだよね。
そろそろ、本気でどこのシャンプーを使っているか聞いてもいいかな。さすがに気持ち悪がられるかな。
「しのみやくーん……」
至近距離。
起きているときに、こんな距離になんて近づけない、そんなことしたら心臓がばくはつしちゃう。
えええ、こんな至近距離で見つめても毛穴ひとつ見当たらないんだけど、どうなってるの……?
とても、外で部活しているひとの肌とは思えない。
シャンプーのついでに、スキンケアの秘訣も一緒に教えてくれないかな。
「んん、ぜんぜん起きない……」
そうこうしているうちに、起きないなら起きないでいっか、なんて思えてきてしまう。
だって、篠宮くんが起きなかったら、ずっとこのままでしょう。
帰らなくてもいいでしょ、だって篠宮くんが起きないんだもん。
そしたら、ずっと一緒、だもん。