スパークリング・ハニー
すっとまっすぐに伸びてくる腕。
状況を理解するより先に、彼の手のひらが額にそっと触れた。
「熱はなさそう。つーか、熱いというより冷たいな」
青ざめている私の顔をちら、とうかがって、今度は指先を手のひらで包み込んだ。
ひとの体温って、こんなにもあったかかったっけ。
「冷た。あー……たぶん、寒さで血の気引いたっぽい感じだな。軽い貧血、みたいな」
雑踏。慌ただしい足音。
みんな、急いでいる。あたりまえだ。だって今から大事な大事な入試、なんだもの。
なのに、彼があんまりにも落ち着いた様子でいるから、まるで私と彼のふたりだけ、ゆっくりの時間が流れているみたい。
焦るばかりだった感情が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「大丈夫。緊張してるときには、よくあることだよ。俺もたまになる」
「緊張……」
「うん。俺はね、サッカーの試合前とか」
「サッカー、してるんだ……」
そう言われてみれば、スポーツ少年に見えなくもない。
「そう。お腹痛くなったりくらっとしたりするけど、ちゃんと治るよ。大丈夫」
大丈夫、って何度も繰り返してくれる。
自分で唱えるより、だれかに言ってもらえると安心する。