スパークリング・ハニー


そんなこもりんと一緒に帰るため、放課後はサッカー部の練習が終わるまで教室で待つことにしているの。

先ほど篠宮くんが「小森待ち?」と私にたずねたのは、そういうことだ。



一石三鳥なんだよ。

教室で居残りすることによって、学校の課題も進むし、大好きなこもりんと一緒に帰れるし。……篠宮くんのことを眺めていられる、から。



「てゆーか、前髪どしたの?べたべたじゃん」



おでこにぺったりと張りついた、見るも無惨な私の前髪。

目ざとく指摘してから、不思議そうに首を傾げたこもりんに、私はえへへー、と照れ笑いを浮かべる。



「サイダー、頭からかぶっちゃって!」

「……は?」



いやあ、あれは我ながらびっくりだった。

憧れの篠宮くんがくれた、サイダーの缶。
感動と興奮のあまり、あろうことかぶんぶん振り回してしまったのだ。


そして、その結果がこれ。
プルタブを開けた瞬間に大噴射して、頭からサイダーをかぶる羽目になったの。

噴水みたいだったよ、まるで。



机や床は水拭きすると、なんとかなったけれど、髪はそうもいかない。
結局もうすぐ帰るし、まあいっか、と諦めることにしたんだ。



それにしても、せっかく篠宮くんがくれたサイダーだったのに、もったいないことをしてしまったな、なんて。



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