無気力なキミの独占欲が甘々すぎる。



あれだけ一瞬で寝て、呼びかけても反応ないくらい熟睡していたのに。


扉の前に突っ立ったままのわたしに、夏向の視線がゆっくりこちらを見た。



暗くて表情までは見えない。


すると、ベッドに座っていた夏向が急に立ち上がり、わたしのそばにきた。


そして目の前に立ち、わたしの手をギュッと握ったかと思えば、指を絡めてきた。



何事だろうと思い、顔を上げて夏向の表情を見るとさびしそうに瞳が揺れていた。



その夏向を見て、胸が痛んだ。
なんで痛いのか自分でもわからない。



「……冬花嘘ついた」

「え?」


不機嫌そうな、すこし拗ねたような声。
まるで小さな子どもみたい。



「俺から離れないって言ったじゃん」


「い、いや……だって、電気つけたままだったし、タオルも片付けないとって思って……」


「そんな言い訳どーでもいいよ」


また、簡単に腕を引かれて強く抱きしめられる。

< 62 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop