ほわいとちょこれーと!─幼馴染みと恋するホワイトデー
(千早、まだ来てないみたい…)
家に着くと千早の姿はなく、なんとか間に合ったようだった。
自分の部屋に戻るとコートとブレザーを脱ぎ、汗でびしょびしょのシャツを脱ぎ捨てた。身体がすっかり冷えている。
(千早に会うのに何着たらいいかな…)
ワードローブを覗き込む。
そう言えば昔から千早は発表会の清楚なワンピースや上品なスカートを誉めてくれた。
「これにしよ」
少し袖がふわっとしたオフホワイトのニットとタータンチェックのプリーツスカートを引っ張り出す。
ニットを頭から被ろうとした時、
トントン!
「!!」
「瑚子、いる?」
ドアがノックされ、千早の声がした。
「ちょっ!ちょっと待って!!」
慌てて身仕度を整えてシャツを片付けると、チェストの上の鏡で髪が乱れてないかチェックする。
深呼吸をひとつして、それからドアを開けた。
「お待たせ…」
「おー、悪ぃ」
そこにはいつものように微笑む千早がいた。
(千早…怒ってない、のかな…?)
いろんな意味でドキドキしながら、少し背の高い千早を見上げる。
千早も私を見つめ返すから、少しの間見つめ合ったまま沈黙する。
「ごめんな、押し掛けて」
千早が先に口を開く。
「うぅん…あ、とりあえず部屋入って」
遼とママが廊下の陰から様子を窺っている気配がするので私は千早に言った。