転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「私に、『兄として頼ってほしい』って前に言ってくれたんです。だから、そう思ってます。リヒャルト様がいないと、市場にも行けないし」

 結局、笑ってそんな風にごまかすことしかできなかった。

「そう……リヒャルトのことを、大切にしてもらえるかしら?」

「……それは、大切ですけど」

 ヴィオラにはまだ難しいかもしれないと言いながら、皇妃は話を続けた。

「私は……皇妃に選ばれたけれど、夫となった陛下は、私を顧みてくださることはなかった。リヒャルトが生まれても、それは変わらなかった」

 異国からひとり嫁いできて、誰も頼れる人はいない。夫の気持ちも、アデリナ皇妃に向くことはなかった。

「私が皇妃になることができたのは、ウルミラ王国の王女だったからという理由でしかないの。あの人の心は、私達の結婚より前に亡くなった女性に捧げられていた」

 彼女が皇妃になれなかったのは、オストヴァルト帝国の貴族の中でも、身分が低い家の出だったからそうだ。皇妃にするには、彼女の身分は低すぎた。

 皇妃の地位が空のまま、第二妃となった彼女は、皇帝とアデリナ皇妃の結婚直後に亡くなったという。

 以来、彼の気持ちはずっと彼女に向けられたまま。皇太子を産んだアデリナ皇妃のところには、月に一度訪れるか否か。

< 118 / 225 >

この作品をシェア

pagetop