転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「政略結婚にしてもあんまりだと思ったわ。だけど、なにも言うことができなかった――そうこうするうちに、今度は私の国が滅びてしまって……」

 アデリナ皇妃の両親と兄は国の滅亡とともに亡くなり、他国に嫁いでいる姉は生き残った。けれど、皇妃の後見をしてくれるような立場の人は全員死に絶えてしまった。

「その時、少しだけ期待してしまったのね。夫がまだ、私を皇妃として扱ってくれたから……少しは気の毒に思ってくれたんじゃないかって」

 けれど、それもまた皇妃の期待で終わってしまった。皇妃の地位から退かせなかったのは、リヒャルトを皇太子としているからだ。

 実家の後見を受けられなくなった皇妃に対して、支給金の増額と、皇族の私的財産からの援助はしてくれたけれど、満月宮に帰る回数は増えるどころか減る一方だった。

「陛下は私を捨てられなかっただけなのよね。それでも、いつかは――と期待してしまうのはやめられなかった。公の場で顔を合わせる度、今回こそはなにか声をかけてくれるのではないかと勝手に期待して、叶えられなければ落ち込んで」

 期待して裏切られ続けたために、公務に出るを恐れるようになってしまった。

 けれど、リヒャルトが満月宮に帰ることが増えてからは、考え方が変わってきたのだという。

 その日あったことを、リヒャルトとおしゃべりしながら食事をする。一日満月宮にいては、彼と話すこともなくなってしまうから、積極的に外に出るようになる。

 公務だって、皇妃自身の目で見たことをリヒャルトに告げれば、それはそれで大きな手伝いた。

「もう、あの人に期待はしない。けれど、私は私で強くあらなければと思ったの。皇妃としての立場を脅かす人達に負けないように。皇太子の母としてふさわしくならなくては」

「皇妃様は、十分お務めを果たしてらっしゃると思います」

「あなたのおかげよ、ヴィオラ。リヒャルトを兄のように思うのなら――私を、母のように思ってはもらえないかしら。あなたにはたくさんお返しをしなければならないもの」

 ――母。

 その言葉だけで、胸がいっぱいになる。

「ありがとうございます、皇妃様」

 ヴィオラは、深く深く頭を下げたのだった。



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