転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 ティアンネ妃以下、皇帝の妃全員。それと、皇子、皇女のうち成人が集められているようだ。

「――父上。今年の晩餐会で、食事に毒キノコが紛れ込んでいたことに気づいたのが、ここにいるヴィオラ姫。イローウェン王国の王女です」

「ああ、それで見覚えがあったのだな」

 皇帝はヴィオラにまっすぐに視線を向けた。

 彼のその表情は、長年の間、この大国を治めてきた人間だけが持つ威厳に満ちていた。まるで、ヴィオラの嘘をすべて見抜こうとしているような。

(……私は、嘘はついていない)

 やましいことなんて何もない。まっすぐに彼の視線を見つめ返す。毅然として見えるように、背筋をピンと伸ばした。

「そもそも、ことの発端はティアンネ妃にあります。今年、彼女には焦らなければならない理由があった」

 リヒャルトはヴィオラを引き寄せ、背後からその両肩に手をかける。リヒャルトがこの先、なにを言おうとしているのかはわからなかったけれど、彼の手がそこにあるというだけで、安堵していいと思えた。

 リヒャルトの側にいれば、なにひとつ怖いことはない。意図して深い呼吸を繰り返す。

「その理由とは? ティアンネが余の妃となってすでに三十年近くたっている。今さら、焦る必要もないだろう」

「イローウェン王国との戦ですよ、父上。国境を争い、ティアンネ妃の母国であるトロネディア王国とイローウェン王国の間に戦となった←が起こった。父上が間に入り、双方の賠償もすでに終わっている。そうですよね?」

「ああ、そうだ」

 具体的に戦がどう決着したのか、ヴィオラは聞かされていない。子供に聞かせてもしかたがないということなのだろうと解釈している。

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