転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 ティアンネ妃がその言葉の意味するところを理解したと判断したところでまた続ける。

「母が盛られた毒です――ただし、本来薄めて使うものを原液のままあなたのグラスに入れたのでね。母より早く効果が出るでしょう。効き目については、ご自分の身体で試してみてはいかがでしょうか」

 悪びれる様子もなく、にっこりとするリヒャルト。

 ティアンネ妃は、リヒャルトを見て、皇帝に目をやり――そしてリヒャルトに視線を戻す。両手で口もとを覆ったのは、驚愕のためなのだろうか。

「な――」

「白状すれば、解毒剤を差し上げます」

 にっこりとしたリヒャルトの顔に、ティアンネ妃の悔しそうな顔。そして、彼女はヴィオラにつかみかかろうとした。素早くリヒャルトが立ちふさがる。

「この! お前さえ、お前さえ来なければ――! 解毒剤をよこしなさい!」

「……俺は、なにもしていませんよ。水は、ただの水です。だいたい、子供に毒物の入った水を勧めさせるなんてありえないでしょうに」

 あの時、あえてティアンネ妃に背を向ける位置について、ヴィオラは皇妃にグラスを渡した。皇妃の方も意味ありそうにヴィオラに微笑んで見せたから、ティアンネ妃があの時毒を盛られたと判断するように二人で誘導したのだ。

「なっ……だ、だましたのねっ!」

 はからずも告白した形になってしまったティアンネ妃は、なおもリヒャルトにつかみかかろうとする。そんな彼女を兵士達がしっかりと両側から押さえつけた。

 兵に引きずられるようにしてティアンネ妃は退出し、あとに残された者達は深くため息をついた。

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