転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「これは、見たことのない料理だな」

「ミナホの国の料理なんですよ、陛下。あそこにいるヴィオラ姫がわが宮の料理人達に指導してくれましたの」

「ほう。そなたが手元に置いているというあの姫か。彼女にはいろいろと世話になってしまったな」

「ええ、ですから――国に帰すのはもったいないと思いますのよ」

 なんて会話を、皇帝と皇妃がかわしているのが聞こえたけれど、そこからは意識をそらした。

 別に、そこまで考えていたわけではなかったものの、皇妃がこの国に残る理由を作ってくれるというのであればありがたく受け入れる所存だ。

 女官として教育を受け、皇妃にお仕えするのもいいかもしれない。最初のうちは、いろいろと心配になるくらい気弱そうな女性であったけれど、今は自分の足でしっかりと立とうとしているのもヴィオラにはわかる。

「そなたは冷たいな」

 不意に皇帝の言葉が聞こえて、ヴィオラは思わずそちらへ目を向ける。ちょうど、アデリナ皇妃が肩をすくめたところだった。

「冷たいのではありません、陛下。今まで皇妃としての務めを果たせなかった分、今の私には、なさねばならないことがたくさんあるというだけの話です。さあ、こちらの料理はいかが?」

 まさか、焼きおにぎりまで皇帝に差し出されるとは思ってもいなかった。

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