転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 とにかく、今自分の置かれている状況に頭がついてこない。

 まるで物語のお姫様みたいだ。実際『ヴィオラ』はお姫様ではあるけれど、ニイファ以外からお姫様扱いされたのなんて初めてといってもいいくらいだ。

「どうした、馬に乗るのは初めてか。怖いなら俺にしっかり掴まっておけ」

「こ、怖くなんてありませんよっ!」

 そう叫ぶみたいに言ったけれど、声が震えているのだから強がりがまるわかりだ。リヒャルトの笑い声が頭の上から降ってくる。

(だって、しかたないじゃない……どきどきするんだから)

 身体はまだ十二歳。でも、精神は十八歳。見目麗しい男性と密着してドキドキしないはずがない。

「騎士団の訓練って簡単に見られるんですか?」

 子供だから大丈夫。子供だから大丈夫。

 心の中で繰り返し自分に言い聞かせる。

 リヒャルトだって、子供のヴィオラのことをなんとも思っていないから、ぴったりくっつけとかいう提案をしてきたのだろう。

 だから、ヴィオラがどきどきしているのを表に出さなければ、なんてことはないのだ。

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