転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「よかったわ、元気そうで。今日はなんの御用かしら?」

「昨日、リヒャルト様に市場に連れて行ってもらったんです。このお城から出ることができないと思っていたから嬉しくて……それで、ミナホ国からの食材を扱っているお店を見つけたので、これを焼いてみたんです。もし、よかったら……味を見てはいただけませんか」

「……まあ」

 皇妃はヴィオラが出した籠の中身を見て、目を見張った。

(これ、どら焼きじゃなかったらどうしよう……)

 ヴィオラは、皇妃の視線にドキドキしながら、籠を彼女の方へと押しやる。豆のクリームをはさんだパンケーキ。たぶん、どら焼きのことで間違いないとは思うのだけど……。

「昔、お友達からいただいたお菓子と似ているわ!」

 嬉しそうに両手を打ち合わせたかと思ったら、どら焼きに手を伸ばす。

「――皇妃陛下。失礼します」

 けれど、側にいた侍女がさっとその籠を取り上げてしまった。

(あ、そうか……毒見しないとよね)

「俺が頼んだんだ。毒見は不要だろう」

「いえ、殿下。これも決まりですから」

「……ひとつ、ください」

 ヴィオラは籠を持った侍女の方に手を伸ばす。彼女が無造作に取り上げたどら焼きを受け取ると、包んでいた紙をはがした。

「失礼しますね」

 大きくひと口。遠慮なく齧る。

 先ほどニイファと半分分けて食べたけど、こちらも上出来だ。すごく、おいしい。

< 96 / 225 >

この作品をシェア

pagetop