どこかで夏が、笑っていた
「だい、じょうぶですっ」
強がり。お願い、いまだけ、強がりを吐かせて。そうしないと、保てないから。
「……ん、そっか」
いまだ顔をあげられない私に、あたたかな手がのせられる。ぽんぽんと頭をなでられ、再び……。
「っ、ごめんなさい……」
ぽつぽつ。感情の雨が、細かく降りゆく。
茶髪。ふわふわ。大きな瞳。平行な眉。……そんな彼の、綺麗な姿もみえなくなった。
「ん」
彼はほとんど言葉を発さず、ただ抱きしめてくれていて。
そんな彼のあたたかな胸の内に甘えて、縋るように泣きわめいたことを覚えている。