氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
氷雨が晴明を連れてやって来ると、赤子は起きていて泣きに泣いていた。
どうすればいいか分からず慌てふためく朧から赤子を受け取った氷雨は、ゆっくり身体を揺らしてあやしてやりながらにこにこ。
「よく泣くなあ。元気が良くていい!主さまたちはどっちかっていうとあんまり泣かなかったから面白みがなかったけど、お前はどんどん泣いていいぞー」
優しい声色と海よりも深い色の真っ青な目に吸い込まれるようにして赤子がまた眠ってしまうと、今度は晴明に赤子を渡して朧の隣に座った。
「で、真名はもうありそうか?」
「特殊な術式を使わねば分からぬ。ひとまず今宵は朧に任せるとしよう。だが雪男…重々用心せねばならぬよ」
「ん、分かってる」
ありがとな、と声をかけ、晴明が退席した後、氷雨は朧がずっと口を開けたり閉じたりしていることに気付いていて、肩口に垂れた長く艶やかな髪を指で掬った。
「どうした?」
「私…その…何の覚悟もなく赤ちゃんを引き取るなんて言っちゃって…ごめんなさい」
「あー…なんで急にそんなこと?なんで謝ってんの?」
「だってさっき氷雨さんちょっと怒ってたっていうか…呆れてたみたいだから…」
しゅんとなった朧の頬を手の甲で撫でた氷雨は、そんなことで朧が今までやきもきしていたのかと思うと可愛くなって、むにっと頬をつまんだ。
「ばーか、んなことで怒るかよ。確かに呆れはしたけど、主さまたちが自我が芽生えるまでは手元に置くって言ったから、真名がないんなら名付け親になりたいなーって思ってさ」
「え…名付け親…ですか?」
「んん。それ考えててさっきは上の空だったから謝るのは俺の方だな、ごめん。お前はこいつの世話にかかりっきりでいいけど、俺は今までと変わんねえから。構いまくりまーす」
「きゃっ、も、氷雨さん、くすぐったいっ」
わき腹をくすぐられてつい大きな声が出ると赤子がもぞもぞ動いたため、ふたりで唇に人差し指をあてて笑いを堪えた。
「もし真名がまだついてなかったらふたりで考えような」
「はい」
軽く唇を重ねて指を重ね合わせた。
この温もりがとても好きで、大切な証。
どうすればいいか分からず慌てふためく朧から赤子を受け取った氷雨は、ゆっくり身体を揺らしてあやしてやりながらにこにこ。
「よく泣くなあ。元気が良くていい!主さまたちはどっちかっていうとあんまり泣かなかったから面白みがなかったけど、お前はどんどん泣いていいぞー」
優しい声色と海よりも深い色の真っ青な目に吸い込まれるようにして赤子がまた眠ってしまうと、今度は晴明に赤子を渡して朧の隣に座った。
「で、真名はもうありそうか?」
「特殊な術式を使わねば分からぬ。ひとまず今宵は朧に任せるとしよう。だが雪男…重々用心せねばならぬよ」
「ん、分かってる」
ありがとな、と声をかけ、晴明が退席した後、氷雨は朧がずっと口を開けたり閉じたりしていることに気付いていて、肩口に垂れた長く艶やかな髪を指で掬った。
「どうした?」
「私…その…何の覚悟もなく赤ちゃんを引き取るなんて言っちゃって…ごめんなさい」
「あー…なんで急にそんなこと?なんで謝ってんの?」
「だってさっき氷雨さんちょっと怒ってたっていうか…呆れてたみたいだから…」
しゅんとなった朧の頬を手の甲で撫でた氷雨は、そんなことで朧が今までやきもきしていたのかと思うと可愛くなって、むにっと頬をつまんだ。
「ばーか、んなことで怒るかよ。確かに呆れはしたけど、主さまたちが自我が芽生えるまでは手元に置くって言ったから、真名がないんなら名付け親になりたいなーって思ってさ」
「え…名付け親…ですか?」
「んん。それ考えててさっきは上の空だったから謝るのは俺の方だな、ごめん。お前はこいつの世話にかかりっきりでいいけど、俺は今までと変わんねえから。構いまくりまーす」
「きゃっ、も、氷雨さん、くすぐったいっ」
わき腹をくすぐられてつい大きな声が出ると赤子がもぞもぞ動いたため、ふたりで唇に人差し指をあてて笑いを堪えた。
「もし真名がまだついてなかったらふたりで考えような」
「はい」
軽く唇を重ねて指を重ね合わせた。
この温もりがとても好きで、大切な証。