氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
朧はまだ刀で敵を傷つけたことはなかったが、確かな技術で一縷の情けもかけず、屠り続けた。
身を翻す度に長い黒髪が美しく舞い、まさに女傑といっても過言ではない。
氷雨は戦闘の最中に口笛を吹き、誇らしげに朔に声をかけた。
「俺の嫁さんすごくね?あれで初陣とか信じらんねえ」
「鬼頭家の直系だからな、あれ位はやると思っていたが…さすが俺の妹」
嫁自慢の氷雨と妹自慢の朔――
天満も密かに朔と同じ感想を思っていたが、久々の戦闘で少し血沸き肉踊ってしまって会話に加わることができなかった。
「お師匠様!手!動かして!」
「おうっ」
檄を飛ばされて先頭の面々が奮闘した結果、反抗勢力の殲滅に成功して皆が刀を収めて一息ついた。
朧もはじめて殺生を経験したものの怖いとか不安だとかそういった感情は覚えなかったため、やはり自分も戦いに喜びを覚える気性なのだなと新たにひとつ発見。
「朧、どこも怪我してないか?」
雪月花を消した氷雨が肩に手を置いて顔を覗き込むと、朧は頬を上気させてこくんと頷き、氷雨に抱き着いてそのたくましい胸に頬をすり寄せた。
「よし、じゃあ戻ろう。みんなご苦労さん」
百鬼たちは各々寝床を見つけて朔と共に行動しないため、現地解散となると、朔はすり寄って来た猫又の頭を撫でて朧の元へ行くよう命じた。
「先に戻っていていいぞ。俺はぎんたちと少しこの辺を警戒して見て回るから」
「僕も残ります。はいこれ鍵。雪男と朧は先に戻ってゆっくりしていて」
「ん、分かった」
――ふたりきりになれる。
どきどきした朧を前に乗せた氷雨は、しっかりその細い腰を抱いて猫又を走らせた。
「疲れただろ、風呂に入ってゆっくり身体休めろよ」
「は、はい…」
一緒に、とは言い出せず、氷雨の身体に体重を預けて冷える空気で熱い頬を冷やしながら鬼陸奥へ戻った。
身を翻す度に長い黒髪が美しく舞い、まさに女傑といっても過言ではない。
氷雨は戦闘の最中に口笛を吹き、誇らしげに朔に声をかけた。
「俺の嫁さんすごくね?あれで初陣とか信じらんねえ」
「鬼頭家の直系だからな、あれ位はやると思っていたが…さすが俺の妹」
嫁自慢の氷雨と妹自慢の朔――
天満も密かに朔と同じ感想を思っていたが、久々の戦闘で少し血沸き肉踊ってしまって会話に加わることができなかった。
「お師匠様!手!動かして!」
「おうっ」
檄を飛ばされて先頭の面々が奮闘した結果、反抗勢力の殲滅に成功して皆が刀を収めて一息ついた。
朧もはじめて殺生を経験したものの怖いとか不安だとかそういった感情は覚えなかったため、やはり自分も戦いに喜びを覚える気性なのだなと新たにひとつ発見。
「朧、どこも怪我してないか?」
雪月花を消した氷雨が肩に手を置いて顔を覗き込むと、朧は頬を上気させてこくんと頷き、氷雨に抱き着いてそのたくましい胸に頬をすり寄せた。
「よし、じゃあ戻ろう。みんなご苦労さん」
百鬼たちは各々寝床を見つけて朔と共に行動しないため、現地解散となると、朔はすり寄って来た猫又の頭を撫でて朧の元へ行くよう命じた。
「先に戻っていていいぞ。俺はぎんたちと少しこの辺を警戒して見て回るから」
「僕も残ります。はいこれ鍵。雪男と朧は先に戻ってゆっくりしていて」
「ん、分かった」
――ふたりきりになれる。
どきどきした朧を前に乗せた氷雨は、しっかりその細い腰を抱いて猫又を走らせた。
「疲れただろ、風呂に入ってゆっくり身体休めろよ」
「は、はい…」
一緒に、とは言い出せず、氷雨の身体に体重を預けて冷える空気で熱い頬を冷やしながら鬼陸奥へ戻った。