氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
背後で刀を抜く音がしたため振り返ると、中央に居たはずの朧が立っていたため、傍で頬をかいている天満を睨んだ。


「おい天満」


「ごめん、力不足でした」


結局は兄弟の誰もがこの末妹に弱く、まだ残党の残る中氷雨は乱戦になった周囲を見回して注意しながら話しかけた。


「怪我してないか?」


「全然。あの、お師匠様…」


「ん?」


「あの…とっても素敵。戦ってるとこ、すごくかっこいい」


普段戦闘行為を行わないためいつも以上に氷雨がいい男に見えてしまう朧がとろんとした目つきで袖を握ってくると、氷雨ははにかんで朧の腰を抱いて引き寄せた。


「そんなのとっくの昔から知ってると思ってたけど?」


「知ってましたけど、でももっと素敵な方なんだって気が付いたの!絶対誰にも渡さないんだからっ!」


「ははっ、渡さないも何も俺たち夫婦じゃん。誰にも渡されません」


ぶはっと吹き出した朔を軽く睨んだ氷雨は、銀と焔に声をかけて再び雪月花を煌めかせた


「よし、残党を一掃しに行こう。主さま、我を忘れてないな?行けるな?」


「心配されなくても行ける。天満、お前もついて来い」


「僕が行ったら朔兄たちの出番がなくなりますよ」


天満は兄弟の中で最も速く、しかも二刀流なため一瞬で敵を屠ってきた。

朔はもう十分数えきれないほど敵を斬ってきたため、前へ来るようくいっと顎を上げると、捨て身の覚悟で向かってきた集団に壮絶な笑みを浮かべて刀を指で撫でた。


「元より一匹も見逃すつもりはない。行こう」


「私も!行きます!」


異次元の強さを見せる兄たちに置いて行かれぬよう、朧も共に駆けた。

氷雨と共に肩を並べて、星の瞬く夜空を駆けた。
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