氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
氷雨たちを鬼陸奥に置いて幽玄町に戻った朔は、傍に居ないことを少し不思議に思っていた。
百鬼夜行は氷雨はついて来ないため差し支えなかったが…屋敷に戻るといつも必ず一番に出迎えてくれる氷雨が居ないため、若干肩を落としながら縁側に座って一息ついた。
「朔よ、雪男不在で寂しそうだな」
「…そんなことはない。俺の傍に居ない時だって今後あるだろうから、予行練習だ」
「あれも所帯を持ったからな。次は朔、お前だな」
声をかけてきたのはかつて父の十六夜と因縁のあった九尾の白狐、銀だ。
真っ白…いや、銀色に近い短髪の頭の左右にはふわふわの耳、尻にはふわふわの尻尾が揺れていて、なんとなくその尻尾を握って振り回した。
「小耳に挟んだんだが、新婚旅行に行かせるらしいな。お前寂しくて死んでしまうんじゃないか?」
「…俺はそこまで雪男に心酔しているか?」
「しているとも。お前が小さい頃から雪男が父や兄のように世話してきたのだから、お前がもし雪男の存在をどうでもいいと思っているのならば、あれが哀れだな」
「どうでもいいなんて思っていない。あれが戦う様は華麗でいて洗練されている。まあ…参考にしたような、してないような…そういう存在だ」
「妹を嫁にやる位だから相当入れ込んでいるのは間違いないということだな。それを知られるのが恥ずかしいのか?可愛い奴め」
ぐりぐりと頭を撫でられてそれを振り払った朔は、銀が笑いながらいつもの屋根の上に戻った後、ふっと笑った。
「あいつ…いつになったら俺の真名を呼ぶ日が来るのやら」
義兄弟になった今も、氷雨は真名を呼んでくれない。
呼んでほしいのに、とは絶対に自ら懇願することはできず、どうやって自発的に呼ばせてやろうか縁側に寝転んで考えながらにやついた。
百鬼夜行は氷雨はついて来ないため差し支えなかったが…屋敷に戻るといつも必ず一番に出迎えてくれる氷雨が居ないため、若干肩を落としながら縁側に座って一息ついた。
「朔よ、雪男不在で寂しそうだな」
「…そんなことはない。俺の傍に居ない時だって今後あるだろうから、予行練習だ」
「あれも所帯を持ったからな。次は朔、お前だな」
声をかけてきたのはかつて父の十六夜と因縁のあった九尾の白狐、銀だ。
真っ白…いや、銀色に近い短髪の頭の左右にはふわふわの耳、尻にはふわふわの尻尾が揺れていて、なんとなくその尻尾を握って振り回した。
「小耳に挟んだんだが、新婚旅行に行かせるらしいな。お前寂しくて死んでしまうんじゃないか?」
「…俺はそこまで雪男に心酔しているか?」
「しているとも。お前が小さい頃から雪男が父や兄のように世話してきたのだから、お前がもし雪男の存在をどうでもいいと思っているのならば、あれが哀れだな」
「どうでもいいなんて思っていない。あれが戦う様は華麗でいて洗練されている。まあ…参考にしたような、してないような…そういう存在だ」
「妹を嫁にやる位だから相当入れ込んでいるのは間違いないということだな。それを知られるのが恥ずかしいのか?可愛い奴め」
ぐりぐりと頭を撫でられてそれを振り払った朔は、銀が笑いながらいつもの屋根の上に戻った後、ふっと笑った。
「あいつ…いつになったら俺の真名を呼ぶ日が来るのやら」
義兄弟になった今も、氷雨は真名を呼んでくれない。
呼んでほしいのに、とは絶対に自ら懇願することはできず、どうやって自発的に呼ばせてやろうか縁側に寝転んで考えながらにやついた。