氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
完食した後布団に包まって氷雨に腕枕をしてもらうと、暗闇の中でもきらきら光る真っ青な目に見惚れながらその細く強靭な身体に腕を回した。


「新婚旅行の行き先を考えたんです」


「おお、どこに決めたんだ?」


「あのね、如月姉様の所なのっ」


「え…っ」


蛙が潰れた時のような呻き声を上げた氷雨は、思わず朧の両頬をむにっと引っ張って必死な表情で朧の説得にあたった。


「お前、俺を殺したいのか?死んでほしいの?俺そこだけはちょっと勘弁…」


「でもいつかは如月姉様に裏方のお仕事を色々教えてもらわなきゃいけないんでしょ?ならちゃんと仲良くして下さい」


「ええええ…」


――如月は鬼頭家初の娘であり、本来ならば蝶よ花よと育てられるはずだったのが…

本人があまりにも跳ねっ返りで強気な気性だったため、どちらかといえば問題児扱いされていた異端児だった。

しかも氷雨に目をつけて恋心を寄せたため、父の十六夜は大層焦って幼い如月を早めに嫁に出した経緯がある。

それから鬼頭家に生まれた娘たちは思春期になって氷雨に想いを寄せる前に嫁に出すことが多くなり、十六夜が最大限警戒にあたらなければならないきっかけを作った張本人だ。


「如月姉様は確かにお師匠様のことが大好きだったみたいだけど、もうお嫁に出てかなり経ちますから平気ですよ」


「いやお前そんな簡単に言うけどなあ…俺ひどい目に遭ったんだぞ?特に先代からはお前が原因だとか詰られたり、さらに敵意むき出しにされたっていうか…」


「もうっ父様の馬鹿っ!お師匠様のせいじゃないのに!」


…実際それを朧に言われたらきっと十六夜は立ち直れないだろうなと同情しつつ、朧の帯を外しつつ、ため息。


「もし俺が苛められたら助けてくれよな」


「当然助けます!任せて下さい!」


新婚旅行の行き先、如月の元に決定。
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