氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
雪女は華奢な者が多く、鬼族は男であれば屈強、女であれば豊満な者が多い。

朧の母の息吹は華奢だったが、朧は折れそうなほど細い身体つきをしていながらも胸は驚くほど大きくて、氷雨の胸をぎゅうぎゅう押していた。


「あの…ちょっと朧さん?俺を誘惑してんの?」


「だって…こっちに着いてから唇しか触れ合ってないじゃないですか…。新婚旅行なんですよね?私すっごく期待してたのに」


「期待?俺に可愛がられる期待とか?」


朧を身体に乗っけたままぺろんと可愛いお尻を撫でた氷雨は、頬を赤らめた朧を抱きしめて勢いよく起き上がった。


「お前なあ、溺愛の溺愛もいいとこだぞ。大事にして壊れないように努めてんのに挑発すると壊したくなっちまう」


「私簡単に壊れたりしません。氷雨さんのことが大好きだから…もっと可愛がって下さい。乱暴な氷雨さんも…好きだから」


…挑発の挑発もいいところだ。

潤んだ切れ長の目は美しく、氷雨が顎を取って少し上向かせると、朧は目を閉じて身を委ねた。

――こんなに女を可愛いと思ったことはない。

赤子の頃から知っている朧にこんな感情を抱くなんて今でも信じられないと自負している氷雨は、感情のままに唇を重ね、舌を絡め、淫らな音を立てた。


「氷雨さん…」


「ここじゃ誰に見られるか分かんねえな。如月んとこに戻る前にどこか妖の集落に寄ろう。そこで思う存分、お前を抱く。いいな?これは俺を挑発した罰だからな」


「はい…嬉しい」


口笛を吹いて猫又を呼び寄せると、近くの集落へ移動した。

朧は終始氷雨を見つめて、抱き着いて――その温もりを感じ続けた。

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