氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
泉邸には多くの女中が住み込みで働いていた。
如月の命を受けた女中たちは各部屋を掃除するため大わらわで、如月も腕まくりをして必死になって掃除をしていた。
必死な如月の姿に感化された朧も一緒になって掃除することになり、翌朝まで寝ずに掃除をしたことを知ったのは、翌朝だった。
「は?寝ずに掃除した?なんで?」
「如月姉様が掃除しなきゃって必死になってたから私も一緒に。でも見て下さい!さらにすっごくきれいになりました!」
「如ちゃん…朧ちゃんはお客様だよ?止めなきゃ駄目だよ」
「う…だ、だが朧がどうしてもと言ったから…」
きりりとした顔つきの泉に諭されて肩を落とした如月だったが、それを見ていた氷雨と目が合うや否やいかり肩になり、指を突きつけた。
「貴様はどうせぐっすり寝ていたんだろうな!いいご身分なことだな!」
「俺は泉と朝まで色々話してましたー。一番離れの部屋だったから気付かなかったけど…確かにきれいになってる」
廊下はつるつるのぴかぴかになり、調度類もばっちり磨かれていて新品のようになっていた。
晴明が来るかもしれないとのその一言でここまで…と驚いた氷雨だったが――
「お?おお?俺の予感冴えてるな。見ろ朧、あれは八咫烏だ。その後ろは…式神が引いてる牛車だな」
三本足の八咫烏と晴明には深い縁があり、空を駆けてどんどん近付いて来る八咫烏を茫然と見ていた如月は、泉に肘を突かれてはっとして脱兎の如く居なくなってしまった。
「お祖父様が来てくれたんですね、良かった」
「泉、晴明がお前を診てくれるから心配するな。絶対良くなるから」
「ありがとう、雪男くん。ふふ、如ちゃんはおめかしに行ってるから僕がお出迎えするよ」
朧は氷雨の着物の袖を握りつつ八咫烏と牛車に手を振った。
如月夫婦にとって、これが転機になるきっかけとなった。
如月の命を受けた女中たちは各部屋を掃除するため大わらわで、如月も腕まくりをして必死になって掃除をしていた。
必死な如月の姿に感化された朧も一緒になって掃除することになり、翌朝まで寝ずに掃除をしたことを知ったのは、翌朝だった。
「は?寝ずに掃除した?なんで?」
「如月姉様が掃除しなきゃって必死になってたから私も一緒に。でも見て下さい!さらにすっごくきれいになりました!」
「如ちゃん…朧ちゃんはお客様だよ?止めなきゃ駄目だよ」
「う…だ、だが朧がどうしてもと言ったから…」
きりりとした顔つきの泉に諭されて肩を落とした如月だったが、それを見ていた氷雨と目が合うや否やいかり肩になり、指を突きつけた。
「貴様はどうせぐっすり寝ていたんだろうな!いいご身分なことだな!」
「俺は泉と朝まで色々話してましたー。一番離れの部屋だったから気付かなかったけど…確かにきれいになってる」
廊下はつるつるのぴかぴかになり、調度類もばっちり磨かれていて新品のようになっていた。
晴明が来るかもしれないとのその一言でここまで…と驚いた氷雨だったが――
「お?おお?俺の予感冴えてるな。見ろ朧、あれは八咫烏だ。その後ろは…式神が引いてる牛車だな」
三本足の八咫烏と晴明には深い縁があり、空を駆けてどんどん近付いて来る八咫烏を茫然と見ていた如月は、泉に肘を突かれてはっとして脱兎の如く居なくなってしまった。
「お祖父様が来てくれたんですね、良かった」
「泉、晴明がお前を診てくれるから心配するな。絶対良くなるから」
「ありがとう、雪男くん。ふふ、如ちゃんはおめかしに行ってるから僕がお出迎えするよ」
朧は氷雨の着物の袖を握りつつ八咫烏と牛車に手を振った。
如月夫婦にとって、これが転機になるきっかけとなった。