秀才男子は恋が苦手。
衛藤が俺の部屋で、俺のすぐ隣で…笑ってる。
ていうか、近い。近いぞ。やばい、近すぎた。
カフェで勉強するときは、机一個挟んでいつも向き合ってる。距離は常に一定だ。
だけどここにはそれがない。どこに座るかは己の自由。そして俺は、あろうことか、衛藤のすぐ隣に…自ら…座ってしまった…!!
少しでも動けば肩がぶつかりそうなその距離に、意識した瞬間、1ミリも動けなくなる。というか呼吸ができない。なんだこれ。過呼吸?過呼吸なのか?この心臓の音、この距離じゃ衛藤に聞こえてるんじゃ、
「つつるん?」
急にクルリと衛藤が俺を振り向いた。
ドキィッ!と信じられないくらい心臓が跳ねる。
「なっ!な、ななんだよ」
静まれ、とりあえず静まれ俺の心臓。いいか、人間が一生で打つことのできる心拍数は決まっていると言われている。それが本当なら今俺は5年くらい軽く寿命を縮めていると思う。
だからいいから静…
「つつるん見つけたよ~!」
そんな俺の内なる思いなど露知らず、衛藤が得意げに報告してきた。
「ここ!つつるん全然変わってないね~!」
「…え?あ、あぁ…そ、そうか…?」
「うん!変わってない!いいなぁ、私もつつるんと同じ中学が良かったなぁ」
俺の写真を見つめながら、サラッとそんなことを言う衛藤の横顔に、俺は釘付けになる。
「…は?」
「だってつつるんと中学から一緒だったら、絶対もっと早く仲良くなれたでしょ?つつるんと楽しい思い出たくさん作れたんだろうなって思うんだよねぇ」
…あぁ、もう。なんだこれ。