秀才男子は恋が苦手。



まっすぐ俺を見て笑う衛藤に、その瞳に吸い寄せられる。


「え…つつるん?」


心臓がうるさいとか。寿命縮まるとか。そんなのもうどうだっていい。


今俺の隣に、手を伸ばせばすぐに触れられるところに衛藤がいる。



衛藤の大きく見開いた瞳に俺が映ってる。
俺の瞳にも、衛藤が映っているんだろうか。



グイ、と衛藤の首の後ろに手をまわして、引き寄せた。




“好きだ”




ゼロの距離まであと、10センチ、5センチ、3センチ―――




“気になる人なら、いるよっ!”



「っ悪い」


頭の中に蘇ったその声に、反射的に衛藤から離れていた。


「え…つ、つつるん…?」

「ごめん、違う、そうじゃない。今のはその…」


ダメだ。
どんな言い訳したってバレバレだろう。


今俺が、衛藤にキスしようとしたことなんて―――



「…悪い、ちょっと飲み物取ってくるわ」



部屋を出て、はぁ…と何かを吐き出すように息を、吐いた。


何してるんだ俺。衛藤には好きな奴がいるっていうのに。



…バッカじゃねぇの。




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