秀才男子は恋が苦手。
「あー、疲れた!!」
一時間半ほど経った頃だろうか。ペンを置いた衛藤が大きく伸びをした。
「あぁ…そうだな」
俺も久しぶりにがっつり暗記を集中的にしたら疲れた。
「…飲み物持ってくる」
「ありがとー!」
にっこり笑う衛藤。
…うわ、可愛い…って!
「だから俺!」
「ん?何?」
不思議そうに首を傾ける衛藤。
「…何でもない」
だから俺。
平常心だ、平常心。
「うわっ、すごい、シュークリーム!?」
キッチンで淹れた紅茶と、ついでに冷蔵庫にあったシュークリームを持ってきた俺に、瞳を輝かせる衛藤。
「…シュークリーム好きなの?衛藤」
「うん!甘いもの全般大好きだけど、シュークリームは特に好き!」
…ふーん。衛藤はシュークリームが好きなのか…って!だから何また、勉強と関係ない知識叩き込んでんだよ…。
衛藤には気になってる奴がいる。
だからこれ以上好きでいちゃいけないって、分かってんのに。
「…るん?つつるん?」
「え、」
やばい、トリップしてた。
何やら目の前では衛藤がソワソワしている。
「どうした?」
「あのー…食べていい?」
「え?あ、あぁもちろん」
どうやら早くシュークリームを食べたかったようだ。
俺の返事に瞳を輝かせた衛藤は、「いただきまーす!」と手を合わせるなり、パクリとシュークリームにかみついた。
瞬間、ふんわり蕩ける衛藤の顔。
「んー…おいしい…」
心底、幸せそうだ。
「…ついてる」
無意識のうちに俺は手を伸ばし、衛藤の口元についたクリームを親指で拭っていた。