悲しみの理由を忘れた少女
〜said西条〜

ある放課後、職員室にプリントを持っていくと学年主任に頼みごとをされた。

「西条、多胡先生のクラスにこのプリント置いてきてくれないかな。」

隣の教室だし、もう遅いから誰もいないだろうと踏んで、俺はそれを引き受けた。

扉を開けようとした時、扉の小さな窓から彼女が見えた。

教室の真ん中で、力無く立つ彼女。
こっちが苦しくなるような表情だった。

彼女の小さな手はスカートを握りしめて、
潤んだ目は床を見つめていた。
今にも大粒の涙が溢れそうになって。

俺は扉を開けるのをやめた。
開けられなかったんだ。
夕日が差し込み教室がオレンジ色に染まるなか、俺は彼女が帰るのを待ち、プリントを教卓に置く。

「あんなに涙溜めてたのに、泣かないのかよ。」

彼女は涙を一つも流さず、目元だけ赤くして帰っていたんだ。
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