クロスロード
「伝説の力?……」
夢の中にいるみたいにフワフワした気持ちでそう呟いた。
みんなともう会えないの?
あの大好きな場所でお昼寝することももうできないの?
なんで私だけ?
浮かんでくる疑問の全てに簡単に答えがでてしまうのは、私にその魔王の落胤が現れたからだろうな。
思えばおかしい話だよね。
生まれた時から一度も家族以外の人と会ったことなかったし。
そういえばよくお父さんは配達に行っていたけど、あれは私を騙すための?
でも騙す必要なんてないもんね。
もう私にはなにがなんだかわからないや。
ただ一つ、ハッキリわかってるのは、もう家族には会えないかもしれないってこと。
そのたった一つのことがとても悲しく辛い。
「私の故郷にある石碑にね、伝説の力を手に入れることができると言われる予言が刻まれてるの」
そんなセレナの言葉に、普段なら、『悪魔の故郷……』と嫌な顔をしそうなタグが眉をしかめながら真剣に話に聞き入っている。
「その伝説の力とやら、私も欲しかったんだけどねぇ」
セレナは少し意味ありげにそう言うと微笑を浮かべてこちらを見やる。
「〝魔王の血をひく者〟って条件つきだったのよ。」
「〝魔王の血〟……。」
ぼんやりとした頭の中を〝魔王の血〟という言葉がグルグルと回る。
そもそもなんで〝魔王の血〟が流れてるからってあんな風に閉じ込められてるんだろ。
そりゃ、私のご先祖様にあたるらしい魔王は戦争とか悪いことしたのかもしれないけど、それは他の人たち……光側っていわれる人たちも同じじゃない。
なんだか、もう……。
「よくわからないよ……」
気づいたらそう口にしていた。
「ああ、そう。じゃあ、分かるまでそうしてる?」
セレナが厳しい声音でそういう。
「おい、そんな言い方ないだろ!」
タグがそういうとセレナはさきほどにも増して厳しい声音で続ける。
「あんたの家族は生きてる。違う?あんたの家族は虐殺なんてされてないし二度と会うことができない訳じゃないの。」
確かにその通りだ。
会うことが出来なくなったわけじゃないし、みんなはまだそこにいる。
「うん」
俯きながらもコクンと頷く。
「なら前向いてシャキッとしなさいよ。 私は承諾も何もしてないけど勝手に託されたのよ、あんたのお守りを」
「そうなのか?」
イライラした様子のセレナにタグがそう質問するとセレナは余計にイライラしたように
「そうとしか考えられないでしょ。そもそも、私、あんたの家にシルベコウを頼んだ覚えはないのよ」
「え?じゃあ……」
「仕組んだんでしょ、あんたのとこの誰か頭のいいやつが」
頭のいいやつ……そう言われると、いつも難しそうな本ばかり読んでるソウくんが思い浮かぶけどソウくんは夢の中で私がこちらに来たことを手放しに喜んでいるよりかは心配しているように見えた。
じゃあ、母さんかな?それとも、父さん?わからないな、私の頭じゃ……。
「じゃあ、なんで頼んでもない品物を受け取ったんだよ。」
「最初は来客が久々に会ったのが嬉しくて招き入れたわけ。そしたらシルベコウを配達に来たとかいうから、ああこいつ間違えてんのねって思って受け取ったの。代金払ったのも騙すためよ。全部お遊びのために、ね」
「お遊びで人を殺しかけるなんて本当に悪趣味だな」
「あらあら、お褒めの言葉ありがとう。でも私が好きなのは殺しかけることじゃなくて、絶望に打ちひしがれる表情を見ることよ」
「ちょっと、いいかな」
口喧嘩をし始める二人の間に入ってそういう。
「セレナのいう伝説の力を手に入れればみんなをその呪いから解放できるのかな?」
その言葉を聞いてセレナはニヤリと口角をあげる。
「わからないわ。ただ、何もしないよりずっといいわよ」
「……わかった。じゃあ、セレナの故郷に連れて行ってもらえるかな?」
セレナは待ってましたとばかりに笑う。
「いいわよ。」
そういって。
「タグ、本当にごめんなさいっ!!」
それから私はタグの方を向くとすぐに頭を下げた。
「私の家、見た通りで、今すぐタグを招いてあげることできそうもないの。だから、もう少し待ってて欲しいんだ。すぐに迎えに行くからどこか」
「何言ってるのさ、ベジ」
私の声を遮ったタグの声はいつにも増して優しい呆れた声音をしていた。
「僕も一緒に行くよ。第一、僕はベジと」
「一緒にいられればそれだけで充分なんだ。この僕の溢れんばかりの気持ちどうか受け取ってはくれないかい?」
途中からセレナが喋り出し、眉間をピクリと動かすタグ。
「そんなこと一言も言ってないだろ」
「でも、同じようなこと言おうとしてたんじゃない?坊や」
「なっ……!」
顔を真っ赤にして怒るタグとニヤリと笑うセレナ。
そんな二人に「まあまあ」という。
17年間の私の全てだった家族といきなり会えなくなって、新しい友達も加わって新しい生活を始めるんだって思ってた。
けど、それがいきなり思ってもなかったような形で崩れ去って、どうすればいいのかわからなくなって、頭がぼんやりした。
けど、まだ希望はあるんだ。
私は大事な二人の友達を見て微笑むと必ずまたここに帰ってくるからね。そう、心の中で呟いた。
夢の中にいるみたいにフワフワした気持ちでそう呟いた。
みんなともう会えないの?
あの大好きな場所でお昼寝することももうできないの?
なんで私だけ?
浮かんでくる疑問の全てに簡単に答えがでてしまうのは、私にその魔王の落胤が現れたからだろうな。
思えばおかしい話だよね。
生まれた時から一度も家族以外の人と会ったことなかったし。
そういえばよくお父さんは配達に行っていたけど、あれは私を騙すための?
でも騙す必要なんてないもんね。
もう私にはなにがなんだかわからないや。
ただ一つ、ハッキリわかってるのは、もう家族には会えないかもしれないってこと。
そのたった一つのことがとても悲しく辛い。
「私の故郷にある石碑にね、伝説の力を手に入れることができると言われる予言が刻まれてるの」
そんなセレナの言葉に、普段なら、『悪魔の故郷……』と嫌な顔をしそうなタグが眉をしかめながら真剣に話に聞き入っている。
「その伝説の力とやら、私も欲しかったんだけどねぇ」
セレナは少し意味ありげにそう言うと微笑を浮かべてこちらを見やる。
「〝魔王の血をひく者〟って条件つきだったのよ。」
「〝魔王の血〟……。」
ぼんやりとした頭の中を〝魔王の血〟という言葉がグルグルと回る。
そもそもなんで〝魔王の血〟が流れてるからってあんな風に閉じ込められてるんだろ。
そりゃ、私のご先祖様にあたるらしい魔王は戦争とか悪いことしたのかもしれないけど、それは他の人たち……光側っていわれる人たちも同じじゃない。
なんだか、もう……。
「よくわからないよ……」
気づいたらそう口にしていた。
「ああ、そう。じゃあ、分かるまでそうしてる?」
セレナが厳しい声音でそういう。
「おい、そんな言い方ないだろ!」
タグがそういうとセレナはさきほどにも増して厳しい声音で続ける。
「あんたの家族は生きてる。違う?あんたの家族は虐殺なんてされてないし二度と会うことができない訳じゃないの。」
確かにその通りだ。
会うことが出来なくなったわけじゃないし、みんなはまだそこにいる。
「うん」
俯きながらもコクンと頷く。
「なら前向いてシャキッとしなさいよ。 私は承諾も何もしてないけど勝手に託されたのよ、あんたのお守りを」
「そうなのか?」
イライラした様子のセレナにタグがそう質問するとセレナは余計にイライラしたように
「そうとしか考えられないでしょ。そもそも、私、あんたの家にシルベコウを頼んだ覚えはないのよ」
「え?じゃあ……」
「仕組んだんでしょ、あんたのとこの誰か頭のいいやつが」
頭のいいやつ……そう言われると、いつも難しそうな本ばかり読んでるソウくんが思い浮かぶけどソウくんは夢の中で私がこちらに来たことを手放しに喜んでいるよりかは心配しているように見えた。
じゃあ、母さんかな?それとも、父さん?わからないな、私の頭じゃ……。
「じゃあ、なんで頼んでもない品物を受け取ったんだよ。」
「最初は来客が久々に会ったのが嬉しくて招き入れたわけ。そしたらシルベコウを配達に来たとかいうから、ああこいつ間違えてんのねって思って受け取ったの。代金払ったのも騙すためよ。全部お遊びのために、ね」
「お遊びで人を殺しかけるなんて本当に悪趣味だな」
「あらあら、お褒めの言葉ありがとう。でも私が好きなのは殺しかけることじゃなくて、絶望に打ちひしがれる表情を見ることよ」
「ちょっと、いいかな」
口喧嘩をし始める二人の間に入ってそういう。
「セレナのいう伝説の力を手に入れればみんなをその呪いから解放できるのかな?」
その言葉を聞いてセレナはニヤリと口角をあげる。
「わからないわ。ただ、何もしないよりずっといいわよ」
「……わかった。じゃあ、セレナの故郷に連れて行ってもらえるかな?」
セレナは待ってましたとばかりに笑う。
「いいわよ。」
そういって。
「タグ、本当にごめんなさいっ!!」
それから私はタグの方を向くとすぐに頭を下げた。
「私の家、見た通りで、今すぐタグを招いてあげることできそうもないの。だから、もう少し待ってて欲しいんだ。すぐに迎えに行くからどこか」
「何言ってるのさ、ベジ」
私の声を遮ったタグの声はいつにも増して優しい呆れた声音をしていた。
「僕も一緒に行くよ。第一、僕はベジと」
「一緒にいられればそれだけで充分なんだ。この僕の溢れんばかりの気持ちどうか受け取ってはくれないかい?」
途中からセレナが喋り出し、眉間をピクリと動かすタグ。
「そんなこと一言も言ってないだろ」
「でも、同じようなこと言おうとしてたんじゃない?坊や」
「なっ……!」
顔を真っ赤にして怒るタグとニヤリと笑うセレナ。
そんな二人に「まあまあ」という。
17年間の私の全てだった家族といきなり会えなくなって、新しい友達も加わって新しい生活を始めるんだって思ってた。
けど、それがいきなり思ってもなかったような形で崩れ去って、どうすればいいのかわからなくなって、頭がぼんやりした。
けど、まだ希望はあるんだ。
私は大事な二人の友達を見て微笑むと必ずまたここに帰ってくるからね。そう、心の中で呟いた。

