隠れ蓑〜Another story〜
気づけばその子ばかりを見つめてしまっていたようで、私の視線に気づいたその子は慌てて小さく頭を下げた。
緊張しているのか、元々の性格なのか少しオドオドしていて見ていて危なっかしい子だなっといった印象を受ける。
目を凝らしてみると、胸元のネームプレートには〝西村 晶帆〟と書かれている。
あれは磨けば光るなっと女の勘で思った。
もしかしたら、今年の受付嬢はあの子になるかもとも思った。
しかし、午後からそれぞれの部署に配属される新入社員の中で受付にやって来たのはあの子ではなかった。
確かに綺麗な子ではあるが、もう出来上がっている〝今時の子〟という印象。
でもまぁ、先輩が寿退社してしまってここ数ヶ月1人での受付勤務はかなり大変だった為ありがたい。
これは、どうにか使い物になるように育てるしかないなっと覚悟を決めた。
「華の受付勤務になりましたぁ。小林 アヤでぇす。宜しくお願いしまぁーす。」
「米川 芹香です、宜しく。取り敢えず、その話し方を止めてくれない?語尾は伸ばさない。社会人の常識よ?ここは受付。この会社の顔なのよ?だから他のどの部署よりも言葉遣いは丁寧に気をつけなきゃいけないの。言葉遣いだけじゃないわ。身なり、仕草もドンドン指導していくから覚悟しておいて。」
まだまだ学生の抜けない彼女に、少し強めに言葉を掛けると薄っすらと涙を浮かべた。
それを見て、先が思いやられるなっと心の中でため息をついた。