隠れ蓑〜Another story〜
こちらを冷たく見つめてくる津川さんに、恐怖を感じたが目に晒さず見つめ返す。
情けないことに手先は震えていたが、強く拳を作って震えを隠した。
すると津川さんが舌打ちの後に最大な溜息をついた。
そして手に持っていた嘆願書を近くの机に置き、反対の手に持っていた退職願いを破き出した。
散り散りになった退職願いが社長室に紙吹雪のように綺麗に舞った。
『これだけの数の署名を見せられたら、異動を取り消すしかない。人事部長としても、、彼女の恋人としても。そして山口さんの覚悟を見せられたら、、駄目だなんて言えないな。』
そう呟いて見せた表情は、普段先輩にだけ見せるような柔らかい表情で一瞬で恐怖から解放された。
津川さんは署名を手にして社長へと向き直った。
「、、これは持ち帰ります。西村 晶帆、並びに山口真美。両2名はこのまま引き続き受付勤務ということでよろしいですか?社長。」
「勿論、意義はない。2人が受付勤務になってからうちの評判は上々だし、お客様の顧客も増えたのが事実だからね。いてもらわないと困る。」