隠れ蓑〜Another story〜
「あ、津川くんっ!お疲れ様っ!!!」
「外回りお疲れ、圭。」
「、、あぁ、お疲れ。」
営業の外回りから帰ってきた彼の視線の先。
それは受付ではなく、エレベーターの方。
書類を抱きかかえ、エレベーターを待っている綺麗な黒髪の後ろ姿の女。
最近、いつもの圭の視線の先にあるその黒髪の女が誰なのか嫌でも分かっている。
何故ならば、私の気になる相手でもあるから。
総務課に配属されたその子は、いつも独りでつい目を追ってしまう。
仕事ぶりは真面目で、勤務態度も良好。
それでいて、誰かに媚びるような態度もなく服装や身なりはどちらかというと地味。
それなのに、女達は彼女を孤独に追い詰める。
いくら地味な格好をしていても、彼女の放つ綺麗で穢れのない可憐なオーラは女の嫉妬の対象になったのだろう。
綺麗に生まれるという事は、時に残酷で可哀想だと思う。
彼女の孤独に気づいていても、手を差し伸べない自分はやはり醜くて、彼の視線が彼女に向いている事が更に醜い感情を剥き出しにする。